SAP S/HANA Cloudの導入事例

自社経営基盤の強化と自社事業のERP領域拡大に向け、
SaaS型ERP「SAP S/4HANA Cloud Public Edition」を導入。
社内実践で見えてきた課題と成功のポイント

SAPタイトル3

会社名
株式会社ゼネテック
本社
東京都新宿区西新宿6-5-1
新宿アイランドタワー 25F
設立
1985年
従業員
657人(2025年4月1日現在/連結)
事業内容
●ソフトウェアとハードウェアの融合によるシステムを提供するシステムソリューション事業
●3D-CAD/CAMシステム「Mastercam」や3Dシミュレーションソフト「FlexSim」、製品ライフサイクル管理ソフト「Windchill®」とアプリケーションライフサイクル管理ソフト「Codebeamer®」を活用し、ものづくりの現場における効率化生産性向上全体最適化に貢献するエンジニアリングソリューション事業
●災害時位置情報共有アプリ『ココダヨ』をはじめ、位置情報を活用して安心・安全を提供するGPS事業
URL
https://www.genetec.co.jp/
導入ソリューション
SAP S/4HANA Cloud Public Edition

デジタル化が急速に進む産業分野では、システム統合によるデータの一元化を通じて経営判断を迅速化し、競争力向上を図る動きが加速しており、SaaS型ERPに対する関心が高まっています。高度なデジタルテクノロジーをもとに、製造業を中心に多くの企業を支えてきた株式会社ゼネテックは、自社の経営基盤を強化するとともに、自社事業における ERP領域の価値提供を拡充するため、SAP S/4HANA Cloud Public Edition(以下、SAP S/4HANA Cloud)を導入しました。導入にあたってはワンアイルコンサルティングを伴走パートナーに迎え、システムに業務を合わせるFit to Standard、ユーザー部門の理解とマインドチェンジなど、これまでのシステム開発とは異なるアプローチを実践しました。2025年10月にSAP S/4HANA Cloudを本稼働し、スピード経営、生産性向上の実現とともに、社内実践で得た知見やノウハウをお客さまに還元していきます。

課 題
  • 経営基盤を強化し横断的なデータ活用を実現したい
  • システムに業務を合わせるFit to Standardをうまく進めたい
  • 自社事業におけるERP領域の拡大に向けてSAP S/4HANA Cloudのノウハウを蓄積したい
効 果
  • SAP S/4HANA Cloudを導入し、事業部や業務ごとに最適化されたシステムを統合。データの一元管理により、経営状況の可視化をリアルタイムで実現
  • ワンアイルコンサルティングの伴走のもと、業務目線を大切にしながらFit to Standardを実現。アドオン開発を行うことなくコスト最適化、運用管理の負荷を軽減
  • SAP S/4HANA Cloud導入における課題や勘所など社内実践で得たノウハウや知見をお客さまに還元

スピード経営、業務改革の実現に向けてニーズが高まるSaaS型ERP

株式会社ゼネテック 取締役上席執行役員
ビジネスサービス統括部長

上野 大輔

1985年創業以来、ゼネテックはソフトウェアとハードウェアの融合によるシステムを提供するシステムソリューション事業、3D-CAD/CAMシステムや3Dミュレーションソフト、PLM・ALMソフトなどを通じてものづくりの現場における効率化・生産性向上に貢献するエンジニアリングソリューション事業、さらに災害時位置情報共有アプリをはじめ、位置情報を活用して安心・安全を提供するGPS事業など、多岐にわたる事業を展開してきました。長期ビジョン「デジタルテクノロジーで、人と地球にやさしい未来を創る。」の実現に向けて3つのC「Change(変革)、Challenge(挑戦)、Continue(継続)」を行動指針として、お客さまとともに歩み続けています。

近年、ソリューションパートナーとしてお客さまの成長に貢献するため、ゼネテックが重要テーマの一つに位置付けているのがERPを活用した全社データ活用です。デジタル化が進む中、データに基づくスピード経営、業務改革、生産性向上などの実現が求められています。一方で、各業務領域で利用するシステムが分散していると、データが複数システムに散在し、受注/購買/工数管理から会計までを横断した連携が難しくなります。さらに、IT人材不足を背景に、運用負荷の軽減や運用の効率化も不可避です。こうした課題はゼネテックにおいても顕在化しており、経営基盤の再構築・強化に向けた対応が急務でした。当時のデータ活用状況について、同社取締役 上席執行役員 ビジネスサービス統括部長 上野 大輔は次のように振り返ります。

「当社では事業部や業務ごとに個別最適化したシステムを導入していたため、データの粒度や管理方法が統一されておらず、横串でデータを活用できない状態でした。経営管理に必要な情報に関して、各システムから収集しExcelで加工する手作業が必要で、月次報告書作成の長時間化、属人化も課題となっていました。さらに2020年3月の株式上場後、成長を加速させるべくM&Aを実施したことで、システム運用が一段と複雑化したのです」

2023年2月、ゼネテックは経営基盤の強化とERP領域の事業拡大に向けた取り組みとして、ソリューション選定に着手。ERP製品は、グローバルスタンダードのSAP S/4HANA Cloudを採用しました。

「当社は個別受注生産に取り組む部門があるため、この業務をカバーできないERP製品はスコープからはずしました。選定の決め手は、業務の標準化を実現できるかどうか。業務の要望に合わせてアドオン開発を行うと、工数もコストもかかることに加え、バージョンアップ時の作業も大きな負担となります。課題となることは分かっていましたが、国内外で実績が多い SAP S/4HANA Cloudを活用し業務を標準化することで、構築期間の短縮、コスト削減とともに中長期的リスクを回避できると考えました。また運用管理の効率化を図るため、SaaS型ERPを前提条件としました」(上野)

ゼネテックは、会計、財務、販売、購買、在庫、プロジェクト管理のSAP S/4HANA モジュールの導入を決定。導入準備段階で大きな課題となったのが、やはりSAP S/4HANA Cloudの標準に業務を合わせるFit to Standardでした。業務の要望に応えて開発するという従来型開発アプローチとまったく異なっていました。

Fit to Standardの実現では “業務目線” が重要なポイント

<プロジェクトマネージャー>
株式会社ゼネテック
システムインテグレーション事業部第3開発部

部長
川村 十志夫

「経験上、システム変革とユーザー側のチェンジマネジメントの両輪で進めなければ、SAP S/4HANA Cloud導入を成功に導くことはできません」と、同社 システムインテグレーション事業部 第3開発部長 川村 十志夫は強調し、こう続けます。「SAPジャパンに相談したところ、ワンアイルコンサルティングを紹介いただきました。実際に話を進める中で、Fit to Standardを前提としたプロジェクトの進め方や留意点について具体的な説明を受け、私たちが必要とする支援を期待できると感じました」

ユーザー側の代表としてコンサルティング会社選定に立ち会った、同社 経営管理統括部 経理財務グループ長 柳山 紀子は「会計の話をしても理解が深く、SAP S/4HANA Cloudでの当社の会計処理の実現方法に関して自信をもって答えていたのが印象的でした」と当時を振り返ります。

2024年4月、ワンアイルコンサルティングを伴走パートナーに、ゼネテックのSAP S/4HANA Cloud自社導入プロジェクトがスタート。プロジェクトマネージャーには川村 十志夫、プロジェクトリーダーには上野 大輔が就任し、新卒2年目の若手社員を含む7名のプロジェクトメンバーで体制を構築しました。同年8月には、ワンアイルコンサルティング支援のもとFit to Standardワークショップを販売や購買など業務ごとに2週間にわたって開催。「プロジェクトメンバー、ユーザー部門が参加し、As is(現状)を確認しながら、SAP S/4HANA Cloudの画面でTo be(業務がこう変わる)を投影。業務をどのように標準に合わせていくかを議論しました」(川村 十志夫)

上野は、「SAPでは、ユーザーが初期段階からトライアル環境で操作し、その中で実際の業務とのギャップを洗い出すことを推奨しています。一方、本プロジェクトでは、SAPを深く理解する前に無理に操作を行うよりも、まずは業務の整理と認識合わせを重視することを選択し、ワークショップをプロジェクト序盤に実施することとしました。このため、ワークショップでは現行業務に軸足を置いた意見が出てくることもありましたが、課題を明確に洗い出せたことで、次のステップに進めたと思っています」と振り返ります。


ワンアイルコンサルティング 取締役 濱浦 惇氏は「Fit to Standardを成功させるには、システムと業務の『翻訳』が鍵になります」と指摘し、以下のように説明します。「SAPの導入方法論は標準化を推進する上で非常に強力な道筋を示してくれますが、現場のユーザーが具体的にイメージを持てるようにするためには、業務の文脈に落とし込む丁寧な対話が不可欠です。SAP S/4HANA Cloudの標準機能を、実際の自社業務でどう使いこなすか。今回、プロジェクトメンバーがシステム側と業務側の橋渡しの役割を担い、ユーザーのチェンジマネジメントに注力していただけたことは、重要なポイントとなりました」

ワンアイルコンサルティング株式会社 取締役
濱浦 惇氏

ゼロベースでFit to Standardに取り組むのはハードルが高くなります。現場での導入支援を担当したワンアイルコンサルティングのコンサルタント Michi Lin 氏は「当社では、Fit to Standard の支援において業務目線を忘れることがないように、目的と設定が対になっているアセットを持っています。今回、そのアセットを活用し、ゼネテックのプロジェクトチームから教えていただいた業務内容を、SAP S/4HANA Cloudに紐づけることで標準化を着実に進めました」と話します。

ワンアイルコンサルティング株式会社 Consultant
Michi Lin 氏

SAP S/4HANA Cloudの構築・運用フェーズではシステム側とユーザー側の共通理解が大切

<導入プロジェクトメンバー>
株式会社ゼネテック
システムインテグレーション事業部

第3開発部 開発課
吉田 遥人

<導入プロジェクトメンバー>
株式会社ゼネテック
システムインテグレーション事業部

第3開発部 開発課
川村 涼

<ユーザー部門 参画メンバー>
株式会社ゼネテック
経営管理統括部
経理財務グループ グループ長

柳山 紀子

<ユーザー部門 参画メンバー>
株式会社ゼネテック
ビジネスサービス統括部
業務推進チーム チーム長

寺澤 伸弘

構築フェーズでも業務目線は重要なポイントとなりました。ゼネテックの導入プロジェクトメンバー 吉田 遥人(現:システムインテグレーション事業部 第3開発部 開発課)は、業務部門とのコミュニケーションの難しさについて語ります。「ユーザー側である業務部門に仕事内容を聞きながら、製品関連のマスター設計を進めていました。当初はシステム側とユーザー側で共通言語が少なく、会話がかみ合いませんでしたが、そんな中でも粘り強くコミュニケーションを重ねることで、お互いに理解が進み、次第にプロジェクト進行もスムーズになりました」

プロジェクト構成

ユーザーからの問い合わせ対応を担った、同社の導入プロジェクトメンバー 川村 涼(現:システムインテグレーション事業部 第3開発部 開発課)も認識合わせの必要性を痛感したと述べます。「ワンアイルコンサルティングからキーユーザートレーニングを受けた上で、ユーザーの質問や困りごとに対応していました。ユーザーサポートでは、ユーザーの業務を理解せずSAP S/4HANA Cloudの技術的な説明に終始してしまっては的確な対応はできませんし、ユーザーには何も届きません。大切なのはユーザーの目線に合わせて会話することであると改めて認識しました」

SAP S/4HANA Cloudにおけるプロジェクト管理の導入をユーザー側のリーダーとして進めた、同社 ビジネスサービス統括部 ビジネスサービスグループ 業務推進チーム長 寺澤 伸弘は、ユーザー部門の視点から導入プロセスにおいて注力した点を以下のように話します。「事業部ごとにプロジェクト管理方法が異なっていたので、それをSAP S/4HANA Cloudの標準に合わせるための取りまとめに苦労しました。予算と実績、原価計画などを行うプロジェクト管理は、会計、購買、調達など関わる領域の幅が広がります。当初は分からない部分も多く、各部門の方々にフォローしてもらいながら業務整理を進めました。また、現場に『業務が変わる』という認識を浸透させる上で、資料作り、情報発信、コミュニケーションが重要であることを再認識しました」

ゼネテックにおけるSAP S/4HANA Cloud自社導入のプロセスは、Fit to Standardを行い、それをもとに要件定義を実施。次に、キーユーザートレーニングでSAP S/4HANA Cloudの実機を使って業務をどのように行っていくのか、シミュレーションにより検証。そのようなプロセスを経てエンドユーザートレーニングを展開し、テストで確認後に本稼働を迎えました。当初、本稼働日は2025年4月でしたが、ユーザー側の準備が整わなかったこともあり2025年10月に延期しました。ただ、この延期がユーザーの意識を変えたきっかけになったと川村 十志夫は振り返り、こう続けます。

「ワークショップやエンドユーザートレーニングだけでは、ユーザー側の理解が追いついていなかったと思います。大切なのは、SAP S/4HANA Cloudの操作を覚えるだけでなく、ユーザーに自分の業務がどのように

変わるのかを自分事として考えてもらうことです。導入の最終局面では、ユーザーをいかに本気にさせるか、本気にさせる環境を作れるかが欠かせないという気づきを得ました」

経営基盤の強化を実現、社内実践で得たノウハウをお客さまに還元

株式会社ゼネテック
技術開発本部
システムインテグレーション事業部営業部


馬場 剛

2025年10月、ゼネテック自社導入のSAP S/4HANA Cloudによる基幹システムが本稼働。経営基盤の強化について柳山は説明します。

「これまで経理が会計伝票のエントリーを行っていましたが、現在は事業部側でSAP S/4HANA Cloudに会計伝票を即時に入れることができます。多くの日本企業と同様に当社の会計は、決算の最後に棚卸をする三分法を採用していました。三分法では月末締めまで原価が分かりません。SAP S/4HANA Cloudの会計は、売上原価対立法を採用しており、売上計上と同時に原価も費用計上されます。そのため売上総利益(粗利)を常に把握できるようになり、経営に関する見通しが立てやすくなりました。今後、決算の早期化や、KPI(重要業績評価指標)など必要な情報を必要なときにダッシュボードで可視化し将来予測につなげることで、意思決定の迅速化に役立てていきたいと思います」

寺澤は、「プロジェクト管理では予算管理における実績をリアルタイムに参照することが可能です。これにより、予算面からの判断および対策をより迅速に行うことができます」と話します。

今回、ゼネテックはアドオン開発することなく標準機能だけでSAP S/4HANA Cloud導入を実現。データの一元化とともにシンプルな運用、コスト最適化が図れました。ワンアイルコンサルティングの濱浦氏は導入成功のポイントについて話します。「ゼネテックの事業が多岐にわたる中で、Fit to Standardを実現できたのは、新しいTo beの業務を考えながら標準機能をフル活用していくという姿勢が、プロジェクトチームにあったからこそと考えています。今回の導入において『業務目線』の大切さを共有できたことは、ゼネテックのERP領域の拡大の観点でもお役に立てたのではないかと思います」

濱浦氏のコメントに対し、川村 十志夫は「今回の自社導入プロジェクトを通じて、Fit to Standardという高いハードルを越えることができました。業務目線でシステムを語ることの重要性を体験できたことは、私たちにとって大きな財産となりました」と率直に話します。

ERP領域の提案・販売に関わる、ゼネテック システムインテグレーション事業部 営業部 部長の馬場剛は、今後の展開について以下のように述べます。「日本の産業を支える中堅企業のデジタル化の推進は、当社の重要なミッションだと考えています。今回の社内実践で得た知見やノウハウを、お客さまに還元していくことには大きな意義があると考えています」

今後の展望について上野は話します。「ERPの導入は、ゴールではありません。データドリブン経営実現に向けた出発点です。今後は、経営層の意思決定はもちろん、事業部門の業績管理や生産性向上に必要なデータを『使える形』で整え、日々の判断と改善につなげていきたいと思います。また、従業員一人一人が力を発揮できる環境づくりという観点でも、現場の業務を支えるデータやAIの活用は重要なテーマになってきます。さらに、SAP S/4HANA Cloudの導入を通じて必要なのはシステムの知識だけではなく、業務をどう変えるかという視点と、ユーザーが主体的に関わるための進め方(チェンジマネジメント)だと強く実感しました。社内実践で得た学びを整理・標準化し、今後の経営基盤の強化とデータ活用の高度化、そしてお客さまへの価値提供にも着実につなげていきます」

ゼネテックは、ソリューションパートナーとしての真価をさらに発揮するために、SAP S/4HANA Cloudによる付加価値を社内外に対して提供してまいります。

システム構成図

© 2026 GENETEC CORPORATION All Rights Reserved.
※記載されている会社名および、製品名は、各社の商標または登録商標です。
※記載されている情報は、2026年1月現在のものです。
© 2026 SAP SE. All rights reserved.
SAP、SAPロゴ、記載されているすべてのSAP製品およびサービス名はドイツにあるSAP SEやその他世界各国における登録商標または商標です。